第二回行程シャッフルフェスティバル

「この間○○に行ってきてさ」なんていう人の話を聞くと、ああそんな場所があるんだ、とかそっからそこ抜けるルートあるんだ、なんてよく思ったりする。隣の芝生は青く見えるし、人の旅程は楽しそうに見える。でもありがたいことに旅程は芝生と違って交換できるぞ!というわけで、それを実際にやった話。の二回目。第二回行程シャッフルフェスティバル。実質最初の記事なのに第二回なのは前回開催したときブログなかったから。

イベントのルールなどは第一回の前に友人が書いた記事が分かりやすいので是非読んでほしい。

fwbc0416.hatenablog.com

あと今回の概要も。

fwbc0416.hatenablog.com

 

ざっくり説明すると、

・出発地と到着地、到着時刻を決めて行程を作成する
・食事以外の費用は計画者の負担
・旅行全体の金額は自由、下限は2000円くらい
・切符はできるだけ参加者が同じ日、同じ場所で買う
・切符は払い戻しの対応ができるよう現金購入
・徒歩利用は2kmくらいまで、タクシーを組み込む場合は計画者負担
・行程にチェックポイントを組み込み、X(旧Twitter)で写真と共に指定文言を投稿させる

という感じ。

行程表と切符類を封筒に入れて、参加者でシャッフル。引き当てた行程をこなして、帰ってきてからあーでもないこーでもないと感想を言うところまでが1セット。

今回は諸々の事情により、9/23㈯にスタート:東京競馬場府中市)付近、ゴール:取手駅、参加するのは前回と同じ4人という形で開催されることになった。

前日夜に集合して、シャッフルを行う。みんなそれぞれ大枠を確認し、戸締りと着地での再集合があるので出発時刻と到着時刻だけ共有しておく。自分は5時半くらいに起きれば良さそう。

 

当日の朝。友人の「え、まだ起きなくて大丈夫?」という声で起きた。スマホを見ると朝6時過ぎ。駅までは15分くらい、予定の列車は府中本町を6:35に出るので、10分そこらで出ないと間に合わねえ。急いで身支度を整え泊地を出る。小雨に降られながら競馬場わきの道路を猛ダッシュ。朝から東京競馬ごっこ武蔵野線にハナ差で差し込み、無事旅行をスタート。

府中本町から武蔵野線京浜東北線で大宮駅まで。新幹線駅までの移動ということで通勤客や学生に交じって列車に揺られる。大宮に7:23着。一瞬何浦和で乗り換えれば良いのか分からなくなって焦ったのは内緒。

武蔵野線 乗れなかったら詰んでた

大宮駅で朝食の駅弁を買い込み、新幹線ホームへ。ここからが旅行本番なのである。乗車するのは「つばさ123号」の11号車、グリーン車。この企画、切符類や移動・観光に必要な経費はすべて計画者持ちなので座席のアップグレードはうれしい。下車駅と指定された米沢までの時間を快適に過ごせる。

朝ごはん 全部食った

福島に8:44着、ここで併結している「やまびこ123号」との切り離し作業を行う。これは見ておきてえなと思いながら列車から降りる。いや普通に考えてつばさが先に出るから無理じゃんと気づいて慌てて元の車内へ戻った。

東北新幹線と別れて西に進路をとると、奥羽本線の線路は福島の盆地を背に標高を稼いでいく。ここほんとすき。進行方向左の席だからよく見えないのがちょっと残念。ここからは板谷峠と呼ばれる区間。東の碓氷峠、西の瀬野八と並び称される日本の鉄道屈指の難所をつばさ号は速くもなく遅くもないまあまあな感じで登ってく。途中通過した峠駅は、まんま峠の最中にある駅で、鉄道オタク的には必修といった感じのところ(?)。その昔オタクの友人と列車の便が悪いので車で行ったのを思い出した。

峠を越え盆地に出ると間もなく米沢に到着。ここからは16分後の普通列車に乗り換える。車内は比較的空いていて着席率は5割くらい。9分の乗車で高畠駅に降り立つ。行程表の立ち寄り場所には「太陽館」とあり、併記されている説明によると温浴施設っぽい。かなりの旅行序盤なのに風呂。備考では入浴しないのも可と書かれているけど、さすがにここまで来て入らないほどひねくれてはいないので入ることにした。

高畠駅と太陽館 改札駅のすぐ隣に温浴施設の入り口がある

入り口で入浴料を支払いタオルを受け取ろうとすると、受付の方に「ポイントカード作りますか?」と聞かれる。ポイントの恩恵を受けられるほど訪れるか?という疑問もあったけど、行程作成者への話のタネにでもなればと思い作ってもらうことに。ポイントは一回1ポイントと思いきやガラガラ抽選機で決める制度になっており、一回で3ポイント獲得することができた。なんか現代バスケみたいで嫌だな、などと思いながら浴場へ。中に入ると、5人くらいの地元のじいさん方が休日の朝風呂を満喫していた。普段から烏の行水なので、湯船には1分くらいと思ったけど「近頃の若いモンは…」みたいな空気になるのを恐れて一応5分くらい浸かって出た。

ぽかぽかした身体で駅の外に出てみると日差しのわりに風が涼しくて秋っぽい気持ちになる。1時間ほどの自由時間を風呂でほとんど消費しなかったので、周辺を少し歩いてみることにした。かつての山形交通高畠線の廃線跡まほろば緑道」を見たり、駅の跨線橋から列車を見てたりして時間を潰す。行程表を見るとどうもこの先お土産を買うタイミングがなさそうなので、駅の売店であんずとラ・フランスのジャムを購入した。

旧山形交通の廃線跡 自転車道や遊歩道にするのはよくあるパターン

高畠から普通列車で一駅、南陽市赤湯駅へ移動。お昼ご飯はここで食べることになっている。南陽市はラーメンの街と謳っているらしく、行程表にもおすすめのラーメン屋さんが載っている。駅からは約1.5kmでタクシーでも可と書いてあり、ありがたいことにタクシー代も同封されていた。のだが、フィジカル系観光客を目指していることもあり歩くことにした。帰ってきてからタクシー代はちゃんと返したぞ。

重くなったリュックをロッカーに預けた後20分ほど歩き、行程作成者おすすめの「赤湯ラーメン 龍上海」というお店に到着。11:30の開店の前に着いたので、余裕かと思いきやなんかめっちゃ混んでいる。50人くらい並んでいる上に開店と同時に入店した人数が10人くらい。これでは次の列車に間に合わない。諦めて近くの別のラーメン屋さん「兼蔵」に入る。こっちはすぐ座れたけど、そのあと満員になってしまった。ラーメンの街恐るべし。

兼蔵 食べたのはこっち

赤湯ラーメン龍上海 全然入れなかった 激混み

赤湯駅に戻り、次の列車に向かう。乗るのは山形鉄道フラワー長井線。駅に着くとホームにこじんまりと単行の気動車が停まっていた。『一日乗車券を写真に収めてつぶやく』というチェックポイントが組まれていたので、車内で一日乗車券を購入する。混み具合は各ボックス席に一人ずつといった程度だったけど、赤湯駅を出てからも数駅ほど乗車が続いたのにはびっくりした。

フラワー長井線の車両と一日乗車券

50分ほど列車に揺られて終点の荒砥駅の一つ手前、四季の郷駅に到着する。『「白鷹町文化交流センター あゆーむ」に立ち寄り写真を撮る』というチェックポイントのために下車することになっている。が、例のあゆーむとかいう謎の箱物以外は田んぼと小さめの倉庫が並ぶだけで、正直見て面白そうなところはない。看板の写真を撮ってからあゆーむの中に入ってみたけど、そこには小中学生の絵画の展示がズラリ。まさか人が来ると思ってもいなかったのか、受付の人にめちゃくちゃ見られる。芸術はからっきしだが、このまま引き返すと間違えて入った感が半端ないので、意地になって絵画を一通り眺めて出ることにした。どう見ても旅行者なのに地元の少年少女たちの絵画を見ているの怪しすぎる。あとから調べたところ開催していたのは「梅津五郎芸術賞 第4回 全国絵画公募展」というものらしい。興味の有無はともかく、行こうとも思わなかった場所に足を運ぶというのはこの企画の醍醐味ではある。

四季の郷を発車するフラワー長井線 何があるんだここ

四季の郷で後続の列車を待って荒砥駅に向かう行程だったけど、どうせ折り返して来るしな…と思い、勝手に行程を変更して荒砥駅まで歩くことにした。ちょうど途中に最上川の橋梁があるらしいので、そこで乗るはずだった列車でも撮ろうか、なんて考えながら2kmちょっとの道のりを線路と付かず離れずで歩いていく。件の橋梁の脇に架かる県道の橋に到着。2,3分で荒砥行の列車がやってくる。うーん、全然うまく撮れなかった、残念。ちなみにこの最上川橋梁、明治20年東海道線の旧木曽川橋梁として架設されたトラスらしく、1世紀以上の歴史を誇り、土木遺産にも認定されている*1。この記事を書いているときに知るという失態。あゆーむよりよっぽどこっちの方が見るべきところでは。

最上川を渡るフラワー長井線 肝心のトラス橋を撮っていない

荒砥駅まで歩き、赤湯駅に戻る列車へ乗り込む。もと来た道を引き返す形なので、車内で少し休息を取る。今泉で列車を降り、今度は米坂線に乗ることになっている。少し時間があるので今泉駅周辺をふらふらしてみる。そういえば昼のラーメンから何も食べていない。時刻は15時、おやつ時ということで駅近くで甘いものを探す。スマホの地図アプリで見てみると「志保家菓子店」なるお店が5分くらいのところにあるらしい。これは行くしかないと思い向かうも、閉業(?)している。コンビニまで行く時間もないので、近くの踏切でさっき乗っていた長井線と同時発車した今泉線を見送って、駅まで戻る。

今泉駅からの米坂線は2022年8月の豪雨で運転を見合わせていて、代行バスに乗ることに。既に大型の観光バスが1台駅前に居座っていた。バスに比べて駅が貧弱すぎる。40人以上座れそうなバスに5人くらいを乗せて出発。駅のロータリーから出るだけで苦労していたので、もっと小さいバスはなかったのかと思ったりもした。今泉を出てしばらくして、米坂線と並走する国道113号を走っていると、雑草に侵食された線路が見え隠れする。バスの中にも外にも、ローカル線の実情みたいなものを垣間見た気がした。結局途中の小国以外での人の乗り降りはなく、2時間と少しをかけてバスは日本海側の坂町駅に到着。

輸送力過剰気味の代行バス これでも鉄道1両の1/3くらいの定員

坂町駅からは羽越本線に乗り換える。改札を通りホームへ出ると、来るはずの列車には相応しくないほど長いホームが横たわっている。往時の姿に思いを馳せて感傷に浸る。これだよこれ。オタクはこのために旅に出るんだ。なんて考えていると、今風の煌びやかな列車が目の前に飛び込んできた。次のランナー「海里」。「海里」は2019年にデビューしたのってたのしい列車(昔で言うところのジョイフルトレインかな?)で、この手の車両にありがちな改造車じゃなくてわざわざ新製したものらしい。旅行商品として予約すると車内で料亭やレストランの料理を楽しめる*2し、そうでなくても広めの座席やコンパートメントから日本海を眺めながらくつろぐことができて素敵。個人的に乗りたい列車の候補だったのでうれしい。ついでに減っていたお腹も車内の売店のお菓子類で満たすことができたのは助かった。窓の外を見ると、さすがに9月も下旬といった感じで、新発田を過ぎて白新線に入るころにはすっかり日が暮れていた。新潟に18:38着。

海里のコンパートメント席と普通席 コンパートメントの廊下は寝台列車みたいで雰囲気◎

新潟駅で1時間ほど夕食の時間が確保されてあったので、下車してお店を探してみる。新しくなった駅のビル周辺を歩いていると、見慣れた緑地に赤文字の看板が目に入る。ピザとかパスタ食いてえなあ。その一心で看板のもとへ向かった。CoCoLoと名付けられた駅ビルのレストラン街に着くと、土曜の夜ということもあるのか例のイタリアンのお店*3は超満員。回転率はあまりよくなさそう。あまり時間がないので断念して何か新潟っぽいものを食べておくか。ということで、並びにあった「越後長岡小嶋屋」というお蕎麦屋さんに入店。かなりお腹が減っていたので、一番ボリューミーっぽそうな「へぎそば+穴子天丼セット」を注文。「へぎそば」は魚沼地方の名物蕎麦で、海藻をつなぎに使っていてツルツルとした食感が楽しめる、ということらしい。後から調べて知ったので、それまで小さく分けて丸めてざるに乗せるのがそうだと思ってた。空腹なのも手伝ってか、ものの5分くらいで完食。あともう1セット食えるな、という気持ちを抑えて蕎麦湯を頼む。これも非常においしかった。

へぎそば+穴子天丼セット おいしい 2セット以上食える

時計を見ると19時半。上野行の特急券を手に、そろそろ旅も終わりだなあ、と思いながら新幹線のホームへ向かう。上野に着いたらあとは通い慣れた道を残すだけなので、気持ち的にはこの新幹線がラストランナーという感じ。乗り込むのは「とき346号」。東京までのすべての駅に停車する、いわゆる停車タイプの新幹線。せっかくお金を払って乗るので乗車時間は長いほうが良いという当然の摂理に従った列車の選択、ナイスである*4

疲れからか新潟を出てすぐ眠ってしまい、起きると浦佐。大体いつも駅に着くたび目が覚めるので安心しきっていたけど、気づくと列車は23番線と書かれたホームに停まっている。やばい上野だ*5、降りなきゃ!と思い慌てて支度をするも周りに誰もいない。車内の電光案内板を見ると、「停車駅:...宮、熊谷、」とある。なんだまだ熊谷より手前かよと思って席に戻る。全然頭が働いてねえ。一回座って状況を整理するとどうもここは東京駅らしい。あー乗り過ごした。こういう時どうすれば良いかと言うと、素直に謝るに尽きる。清算窓口に向かい「すいません、なんか、あの、寝過ごして、上野なんですけど」みたいな寝起きっぽい感じで切符を出すと、そのまま次の「なすの」に乗って戻って良いですよ、との一言*6。よかった。

とき346号の終着、東京駅 ここに来る予定はなかった

上野に戻り、常磐線ホームへ。ここは景気よくグリーン車に課金。列車に揺られ40分ほどで利根川を越え、茨城県に入ったと思うとすぐに取手駅。行程表に記された内容をすべて終え、旅行終了。お疲れさまでした。先に到着していたほかの参加者と湯楽の里で合流してひとっ風呂浴びて、そのあと自宅に戻り感想戦をした。

予定より30分遅れて取手に到着 この景色安心感しかない

 

感想戦は、みんな自分がこなした内容を説明してから、その作成者が補足するというスタイルで行われた。自分が引いた内容は書いた通りで楽しかったけど、自分の考えた旅行に行った人の感想を聞くのは全く別の楽しさがあるなと。「なんだそれ、めっちゃ楽しそうじゃん、俺も行きたい」という感じだし、無責任な自分のプランに良い感じに味付けしてくれていたりするのも面白い。ほかの人がまた別の人に押し付けたプランに文句言ってるのも最高。自分の考えたやつはたぶん行った人がまとめて書いてくれるので、それも楽しみ。ちなみに行程作成者は一応伏せてあるけど、おそらく早々にみんな特定していたと思う。実は今回自分が引いたのは前回開催した時と同じ作成者だったけど、行程表の書式とかで微妙にバレない様にしていた(かくいう自分も前回とは大きく書式を変えた)。それでも当てられたのはお互いそれなりに旅行スタイルみたいなものを把握しているからなのだろうか。次は書式統一したりとか、まだまだ改善できるところは多そう。

次回はいつやるかな、プランを考えておかなきゃ。

今回の行程表と切符類 良い旅行でした

 

*1:最上川橋梁:JR左沢線、最上川橋梁(通称「荒砥鉄道橋」):フラワー長井線の解説シート | 土木学会 選奨土木遺産 (jsce.or.jp)

*2:のってたのしい列車 ポータル>海里:JR東日本 (jreast.co.jp)

*3:サイゼリヤトップページ|サイゼリヤ (saizeriya.co.jp)

*4:ちなみに一番速い上り「とき312号」は東京まで1時間31分、乗った「とき346号」は同2時間10分。40分くらい長く新幹線に乗れる。

*5:そもそも上野は22番線までしかないのだが気づいていない。

*6:JRの旅客営業規則には誤乗の送還について…最近の列車(急行列車を除く。)…と書いているので新幹線には乗れない気もするが、その辺りは現実的な対応としての駅員さんの裁量なのだろうか。